本プロジェクト課題について
地球規模課題対応国際科学技術協力事業は、開発途上国等のニーズを基に、地球規模課題を対象とした将来的社会実装の構想を有する国際共同研究を政府開発援助(ODA)と連携して推進し、地球規模課題の解決及び我が国の科学技術水準の向上につながる新たな知見を獲得することを目的としています。
本プロジェクト課題「氷河減少に対する水資源管理適応策モデルの開発」は,ボリビア国サンアンドレス大学水理研究所と連携し、「現地における水資源政策支援システムの構築」と「次世代の水政策を担う人材育成」をコンセプトとして、平成21年4月に採択されました。9月7日に共同研究内容に関するMM (Minutes of meating,会議議事録) 署名、平成22年1月19日に正式合意に伴うR/D(Record of Discussion,討議議事録)締結、平成22年4月1日から共同研究が正式にスタートしました。共同研究は平成27年3月(期間5年)までを予定しています。
国際共同研究の背景
熱帯アンデスに属するボリビア国の年間降水量は年間500ミリ程度であり,水資源の大部分を氷河の融解水に依存してきました。しかしながら,気候変動に伴い今後30〜40年で熱帯アンデス氷河は消失すると予測され、水資源枯渇の危機に直面しています。水質面では、氷河の消滅に伴い河川流量が減少し、河川や貯水池の汚濁負荷濃度増加に繋がると予測されます。また、気候変動に伴い大雨の頻度が高くなることも予測され、豪雨による土砂の流出が、貯水池の貯水能力を減少させ、水資源の逼迫に拍車をかけることも予想されます。
このような状況において、ボリビア国では気候変動に伴う水問題の対策に迫れていますが、包括的に水問題を扱える専門家が不足し、かつ、水文・水質観測網の整備やデータマネジメント、水資源評価モデルも不十分な状況にあります。
共同研究の目的
- ボリビア国における水資源管理システムの構築 日本側研究グループはこれまで、水問題の各要素(雪氷解析、流出解析、ダム堆砂予測、水質評価、地域計画立案)について、詳細なモデルの構築と精度の検証・改良を行ってきました。これらのモデルは日本国内の複数地域に適用され、水問題の解決に貢献しています。本研究課題では、これらのモデルを統合し、そしてボリビアの氷河域へ移植することにより、水の質・量を予測する総合的な水資源管理モデルを構築します。モデルの最適化と継続運用のため、水文・水質観測網の充実化・データセンターを設置し、ボリビア国の水関係者が自律的に水問題に取り組める水資源管理システムを整備します。
- 氷河後退に対する水資源量評価 まず、本研究で統合された水資源統合モデルと気候モデルよる気候予測の結果を用いて、ボリビア国が将来的に利用可能な水資源量を予測します。併行して、経済成長など社会環境変化を基に将来の水需要量を予測します。利用可能な水資源量と水需要量を比較することで、ボリビア国の水資源政策に対して科学的な知見を提供します。
- 次世代の水問題を担う人材の育成 本プロジェクトでは、共同研究終了後もボリビア国が水管理に対して自立的に取り組めることが重要と考え、次世代の水管理政策を担う研究者・技術者の育成に重点を置きます。具体的には、ボリビア国の博士コース学生や研究員を日本側に受け入れ、上記目標で挙げたモデル構築・将来予測・水資源評価をとおして、水問題を包括的に扱い、水管理・政策立案できる人材を育て上げます。
GRANDE
本事業は通称GRANDE(グランデ)と呼ばれています。「Glacier Retreat impact Assessment and National policy DEvelopment」の略名で、スペイン語で「壮大な、雄大な」という意味を表します。